2015年07月12日
いつまでも仲間

いくつになっても友人というのは良いものです。
これから書くブログは、
実際にデイサービスカデナをご利用されていたYさんの
身近にあった出来事です。
Yさんがデイサービスカデナを利用した頃は、
「家に泥棒がくるから・・・」と、
常に自宅のすべての鍵が掛けられている状態。
ドアも窓も玄関もすべて。
ご家族は空気の入れ替えもままならない状態。
もちろんデイサービスに来ても、すぐに
「家にいないと泥棒がくる!」
「家が心配だからここに来ている暇はない!」
と、すぐに歩いて家に帰ろうとします。
認知症外来の受診結果は「レビー小体型認知症」
Yさんに関わるすべての人で、
できる限りの情報交換をして
Yさんを支えていきました。
毎日、懲りずにお誘いに行く
毎日決まった日課を作る
毎日決まった時間に帰る
それを続けて1年後、
ご家族から、
「今度、主人が元気な頃からずっと続けていた友人達の模合に連れて行きたい」とのご相談を受けた。
その時、正直、”無理かも・・・”という言葉が出てきそうになった。
認知症を患い、同じ話を何度も繰り返すYさんを、友人たちがどう接するのか?
そもそも受け入れてくれるのか?
ダメ元で、Yさんの奥さんと共に模合の開催されている居酒屋へ行って
事情を説明し、参加させて欲しいとのお願いをした。
もちろん短時間でも構わないと・・・。
帰ってきた返答は・・・・
「どうぞ連れて来てください」
「私たちはいつでも、いつまでも友人ですから」
翌月、模合場所にYさんを連れ出した。
Yさんは毎月参加していると話していたが、
実際は数年ぶりの参加であった。
にも関わず、模合に参加している友人たちは
皆、「一ヶ月ぶりだな〜」と暖かく迎えてくれた。
何度も同じ話をするYさんに話を合わせ
昔話に花が咲く。
デイサービスではなかなか見れない
満面の笑み
Yさんの心の時間は昔のまま、
友人達との楽しい思い出
その世界にいるYさんに合わせ
Yさんの世界で話をしている友人達。
私たちは介護の専門家として認知症を勉強している。
認知症の方々の「今の世界」で話をする。
今が子供の頃で、兄弟の子守の心配をしているのであれば
その世界で話をする。
私がその人の親戚であれば、親戚になって話をする。
私たちはそれを学んで実践している。
それをYさんの友人たちは、
普通に、
自然に、
当たり前のようにやっている。
その時に思った。
まだ、私は、Yさんを認知症の人としてみていると・・・。
「その人らしさ」
「一人の人として接する」
友人の皆さんは、Yさんは特別な存在ではなく
一人の友人として接していた。
特別なことは何もしていない。
ただ集って、話をする。
ただそれだけ。
ただそれだけでも、Yさんにとっては
掛け替えのない時間。
認知症のケアの一番大切なことを
私はこの模合の場のみなさんから教えられました。
そしてYさんから、
「私は特別な存在ではない」と教えられました。
この体験は、
私が今のデイサービスを営む中で、
最も良い経験で、
そして大いに学んだ、
とても素晴らしい体験の一つだったと思っています。
その後Yさんは、施設入所が決まり
デイサービスを卒業していきました。
Yさんと過ごした時間は短かったですが、
Yさんの身に起こった、この素晴らしい出来事を
私は
今のスタッフ、
そして今から集うスタッフへ
Yさんの思いと共に伝えていきたいと思います。